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2010/05/14

春の読書感想文

ちょうど1ヶ月くらい前に図書館に行きました。

なんとなく書棚を見ていて発見したのが、村上龍の「半島を出よ」です。
この本が出たころに少し話題になったので、いつか読もうと思っていたので早速借りました。

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確か高校のころ、当時はトンガったサブカルチャー雑誌(と言い切るのは乱暴ですが)だった「宝島」で、村上龍の著作である「69」が紹介されていました。
同時に紹介されていたのがやはり景山民夫の著作「転がる石のように」でした。

この両書に共通するのはどちらも作者の自伝的小説だということと、どちらも1969年の話だということです。
1969年ってのはアポロが月に着陸したり東大安田講堂事件が起こったりウッドストックがあったりオルタモントの悲劇があったりイージーライダーが公開されたりと沢山のことが起こった年なわけです。

そして、1969年は俺が生まれた年なもんですから、他の年以上に個人的に特別感があり、この2冊は高校を卒業する頃にハードカバーで購入して読みました。
どちらも非常に楽しめた話だったので、それ以来この両人の著作を色々と読むようになりました。

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この「半島を出よ」という話は、北朝鮮の武装コマンドが福岡を武装占拠するという話です。
章ごとに登場人物の中の一人の視点で(ただし三人称で)書かれています。

「愛と幻想のファシズム」が結論というか行く末がわからずに終わる(ただし内容としておもしろかったです)のに反して、これはちゃんと完結します。

原稿用紙が1600枚という分厚い上下巻ですが、相当な調査をしたのであろうことが綿密なデータや表現でわかります。
また、必ずしも日本人だけでなく、北朝鮮コマンドの視点で書かれた章もあり、脱北者にインタビューはしたらしいですが、日本にいる限りはほとんど実態がわからない北朝鮮の人々の心情などもとてもうまく書かれてあります。

要はですね、俺としては最近読んだ本の中では相当おもしろかったんですよ。
でも、おもしろかった理由は上記の詳細で濃厚で綿密な内容とか北朝鮮の人々の心情の表現のうまさじゃないのです。

話を完結に向かういわゆるクライマックスの部分なんですが、「おいおい、そういう展開かよ」と苦笑しつつも引き込まれました。
まるで良くできたアクション映画にのめり込んでいるように、ものすごいスピード感とハラハラドキドキ感(死語)で汗びっしょりになりました、文章なのに。

膨大な情報をインプットされた後のこの展開だからなのか、完全に掴まれました。

文章ってのは困ったもので、自分がこういうハマった状態になるときちんと字面を追えなくなるんですよ。
先に読み進みたいキモチときちんと読まないと気がすまないキモチが交錯してしまうのです。

内容に関してはここでは書きませんし、Wikiあたりで見ればきっとストーリーも全部わかるんだと思います。
が、できれば読んでもらいたいです。

俺の好きな映画や俺の好きな音楽、俺の好きなすべての表現は「シンプルで派手でバカでセツナい」ものだと言っています。
この話は「バカ」ではないですが、でもこの感覚は共有してもらえるんではないかと思います。

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コメント

69どわぁいすき
(違う意味の方)
以上

投稿: B-ひで | 2010/05/15 21:33

ひでさん

こらー!
ベタすぎっすよw

投稿: Open6E | 2010/05/16 12:44

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