しばらく好調にエントリを続けていたのですが、少し時間が空いてしまいました。
5月末からの書き残しが1つだけありますのでこれで終わらせておきます。
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1回目のスタジオで録音内容がすべて消え去り、2回目にして何とか2曲、ボーカルまで録り終えました。
これらの素材はMTRからトラックごとにWAVファイルとしてExportされています。
ただ、演奏(=録音)に関しては終了しているのですが、この状態では単なる10トラック分のWAVファイルが存在しているだけなのです。
特にボーカルトラックとか、それだけで聞くと泣けてしまうくらい生々しいのです。
すなわち、これらの素材を使ってトラック処理→ミックスダウン→マスタリングという過程を経ないとなりません。
料理で言うなら、メニュー(何を料理するのか)が決まり、野菜や肉や魚を買ってきたり釣ってきたり収穫してきた、というのが今の状態です。
まさかすべてを皮をむいたり切ったりもせずに生のままで食べるわけにはいきません。
そして、この素材をいかに料理するかが、サウンドエンジニアとしての腕の見せ所なわけです。
つか、見せる腕、無いし!
つか、サウンドエンジニアじゃないし!
つか、まともなミックスダウンってやったことないし!
そう、昔は、カセットのMTRでした。
ピンポンをするたびに音質が劣化するし、ハードウェアエフェクターなので沢山のものがあるわけではないのです。
せいぜい、音量と定位(パン)だけを合わせたドライミックスにトータルのリバーブをかける程度のものでした。
イコライジングを含めて、音質をいじるなんて、ほとんど(実は全く)やりませんでした。
ちなみに、ピンポンにしても、音質を確保するために、まずはリズムの4トラックをDATとかMDにステレオミックスして、これを別のテープに2トラック分録音する、というような涙ぐましい小技を駆使していました。
で、今のご時世はどうかというと、それぞれのWAVファイルにPCの波形編集ソフトなどを使ってイコライジングとかコンプレッサーとかをちょちょいできてしまうのです。
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そんなわけで、まずは録音を行った翌日に最初のミックスをやってみました。
今回は、とりあえずラフミックスを作るだけなので、イコライジングとかの苦手なものはやらないという方針です。
ほんとにイコライジング苦手なんやね、俺。
まず、全トラックを、トラックごとに波形編集ソフトで無音部分の処理や、コンプレッサー / リミッター / ノーマライザ / マキシマイザなど、主に音量のツブぞろえと音圧をかせぐ処理だけを行いました。
一応、ボーカルトラックと曲B(アンプリファイドではない方)のハープトラックにはプレートのリバーブをかけておきました。
これらのファイルをMTRに戻します。
トラック数の多い曲Aは、まずはバッキングトラックだけをミックスし、すなわちカラオケを作ります。
リズムギター、リードギター、ハープ、ベースを4つのトラックにロードして、これらをバウンスして2つのトラックにステレオミックスを作ります。
あとはこれにボーカルの2トラックをそれぞれ2つのトラックにロードし、最終のミックスとするのです。
曲Bはシンプルです。
ボーカル、ハープ、ギター、ベースをそれぞれトラックにロードしてミックスをするのです。
これでミックスされたステレオマスターを再度Exportして、あとはPC側で全体に薄くリバーブをかけ、音量を調節して完了です。
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で、できたものを聞いてみると、気になる点が出てきました。
曲Aは、ベースとボーカルとリズムギターがセンターに定位していて、リードギターとハープが若干左右に振られています。
こんな感じなので、あまりステレオ感が無いのです。
曲Bも同様に、ボーカルとハープとベースとギターがセンターに定位していて、完全にモノラルミックスなのです。
特にこの曲は、通常はハープとギターの2枚でやっているので、リズム感を出すためにギターは低音弦でベースラインを刻むようなことをします。
これを録音のときだけ別の感じに変えれるもんじゃないので、そのままライブと同じように弾き、結果的にベースと周波数がぶつかり、なんか低音が濁ったようになってしまいました。
まあ、自分らの演奏なのでこのミックスでも愛着はあるのですが、聞けばやっぱり不満が出てくるのです。
もっとも、演奏については不満を言ってもあまりにもテキトーに録ったので文句はいいませんが。
あと、ミックスダウンのプロセスですが、MTRとのExportとLoadを繰り返したりなど、当初思っているより煩雑なのです。
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というわけで、リミックスをしてこれらを解決することにしました。
まず、ステレオ感ですが、じゃあリズムギターを広げようと思い、リズムギターをもう1トラックコピーして、それらを左右に振ってみました。
ところが、全く同じ音源が全く同じ音量でまったく対称な定位で鳴るもんですから、結果的にセンター定位になってしまうのです。
そこで、ネットを駆使して色々と調査をしてみました。
ソリューションとして発見したのが、リズムギターに25msecくらいのディレイをかけ、原音とエフェクト音の定位を左右に振る、というものです。
いわゆるダブリングというヤツで、これでステレオ感が出ます。
こんなこと、宅録(なつかしい言い方)やってる人にとっては当たり前なんでしょうが、シロウトにとっては思いつかない技なのです。
これで曲Aも曲Bも広がりが出ました。
そして、センター付近に密集していた音が減ったので、ボーカルとかソロ楽器の聞こえ方が明瞭になりました。
すごいね、ディレイ。
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次に曲Bでギターとベースの低音部がぶつかって濁ってしまう件ですが、一般的にはイコライザとかフィルタでピークをずらして解決するみたいです。
スペクトルアナライザで見てみると、120Hz付近がぶつかっているようです。
それじゃあ、とギターでこのあたりをカットしてみました。
うーん、イマイチ変わらない。
じゃあ、ベースもこのあたりをカットしてみました。
やっぱり変わらない。
つまり、ピークの部分だけカットしてもダメなんやね。
それなら、とハイパスフィルターを使ってギターの100Hzくらいより下をバッサリいってみました。
変わった気がするけど、なんか音が気に入らない。
とかなんとか色々やっていましたが、なんかうまくいきません。
何をどんな順番にかけたかワケわかんなくなりました。
だから俺はイコライジングってイヤなんだよなあ。
結局、どうしたか。
曲Bは、ベーストラックをボツにしました。
笑うな!笑うんじゃねーぞ。
ギターとベースの低音部のフレーズって実に近いのです。
そんならベースいらねーじゃん、とギターとハープとボーカルだけでミックスしてみると、これがなかなかいいんです。
まあ、通常のスタジオ一発録りとかライブとかではこの構成でやってるわけなんだから。
今回はこれでいいんですが、今後はイコライジングも学ばないとダメっすね。
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さて、あとはミックスダウンのプロセスがやたらとメンドクサイという点です。
このMTRを入手したときのエントリで、DAW導入の可能性について書きました。
が、そのときの調査結果は、俺がネットブックで運用するので解像度とか処理性能とかで問題があって導入は難しい、というものでした。
そのときは多少めんどくさくてもいいか、って気分だったんです。
でもこのたび、再度DAWを調べてみて、フリーソフト(最新版は有償)のReaperというDAWソフトをインストールしてみたら、解像度は問題なし。
無理すれば使える、という範囲というよりは、普通に使える、というくらいです。
決して見にくいというほどでも無いのです。
性能も、音が飛び飛びのトビッコになったりすることもなく、いけそうです。
このソフトに関しては、ネット上にも色んなインストラクションもあるし、やたら沢山のパラメータがあるわけじゃないので直感的に操作ができました。
なんか嬉しいのは、定位とかボリュームとかのフェーダー操作をあらかじめ定義しておいて、ミックスダウンのときには勝手にやってくれるオートメーションの機能なんかがあるのです。
あとはエフェクター類です。
DAWの世界では、VSTプラグインと言って、標準化された形式でエフェクターなどを追加できるのです。
このVSTプラグインを世界中の腕自慢が自分が作って無料公開しているもんですから、これを使うことができるのです。
とりあえず最小限必要なものは使えるようになりました。
いや、なかなか便利です。
これで、録音さえ終わったら、あとはPC内で完結できるのです。
ここで書いていることなんて、DAW界では当たり前のことなんでしょうが、俺にとっては非常に新鮮で新しい世界に感じるわけです。
もちろん、まだよく分からないことは沢山ありますが、ちょっとずつ学んでいこうと思っています。
ちなみに、ミックスダウンをした場所は、自宅、マンキツ、マクド(電源があるから)、知り合いのオフィス、と、ノマドスタジオライフを満喫しています。
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そんなわけで、なんとか2回目のミックスもできました。
多少はマシになったと思います。
が、不満は沢山あります。
これはミックスがどうこうというものではありません。
例えばリズムですが、ドンカマ(メトロノーム)に合わせてリズムを弾いているんですが、やっぱりそっちに意識がいってしまって、なんかノリがもたつくところがあります。
これがバックがドラムの音だとイイ感じになったりするんで、そのあたりも工夫ができそうです。
結局は、イイ音でイイ演奏を録るってのが大前提の大基本で、それらに勝るミックスなんて無いってことっすね。
というわけで、一旦Kawasaki Sessionシリーズを終了します。
シリーズと言いながら、2回しか書いてませんが。
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